袴はデリケートな衣装であり、適切な手入れが欠かせません。しかし、礼装向きの袴などは水洗いには適していない場合がほとんどです。適切な手入れ方法を知っておかなければ、縮みや痛みの原因になってしまうでしょう。この記事では、袴の手入れのコツとポイントを解説します。適切にケアする方法を知り、長く楽しみましょう。
袴は自宅で洗わないほうがよい
袴は、古くは男性の和装の礼装として、大正時代からは女学生の制服として着用されてきた衣装です。現在でも、大学生・短大生の女性が卒業式に身につける姿が多く見られます。そのようにポピュラーな袴を手入れする際は、水洗いは基本的に避けましょう。
剣道や剣技などの稽古着・練習着として着用するスポーツ用の袴は、その多くが家庭で洗える製品です。しかし、結婚式用の男性用袴、通夜葬儀などで身につける男性用袴、卒業式などで使用される女性用袴は、基本的に洗濯には適していません。
木綿・麻などは、一般的には水洗い可能な素材ですが、礼装用の袴の場合には水通しを想定していない可能性が高いため、避けたほうがよいです。
水洗いのデメリット
袴は水洗いをするだけで縮んでしまいます。たとえば、木綿繊維でつくられた袴の場合、収縮率は最大で8%近くにおよびます。50センチの長さが4センチ近く縮むことになり、丈が4センチ小さくなると着用時の印象が大きく変わってしまうのです。
多少のサイズ調整に対応できる場合もありますが、大きく縮んでしまうと調整はむずかしいでしょう。専門店に持ち込んでも、もとに戻すことは非常に困難です。また、袴は前後にヒダがあり、袴のうつくしさの象徴的な部分です。
この部分が収縮により崩れてしまうので、袴の魅力が大きく損なわれてしまいます。さらに、色が変わってしまうことも水洗いのデメリットのひとつです。袴を水にはじめてとおすときに、かなり染料が落ちてしまいます。
とくに麻と一部の化繊素材は色の定着力が弱く、色落ちが激しい傾向があるのです。以上のように、現在のきれいな形を保ちながら、きれいな色合いをキープしたい場合は、自宅での洗濯は避けた方が無難といえるでしょう。
袴の基本的なお手入れ方法
袴の水洗いは避けたほうがいいと紹介しましたが、普段どのように手入れすればいいのでしょうか?ここでは、袴の基本的な手入れ方法を紹介します。
陰干し
着用した後の袴をすぐにたたんでしまうと、汗や湿気が残ったままとなり、カビや虫食いのリスクが高まります。よって、着用後の袴はすぐにたたまず、陰干しをして充分に乾燥させることが重要です。直射日光にあたらないように、風通しがいい場所で空気に触れさせましょう。
ホコリ落とし
一見きれいに見えても、着用した後の袴には、ホコリが付着しています。陰干しの後にやわらかい毛質のブラシを使って除去しましょう。ブラシは、どのようなものでも使えるというわけではありません。
毛先が鋭いもの、固いものは袴を痛めたり、繊維が出てしまったりする可能性があるため、避けましょう。粘着テープなどの使用も、おすすめできません。和装用のブラシを使うのが無難です。
汗抜き・染み抜き
袴を暑い日や暖房が効いた場所で着用すると、汗をかいてしまいます。汗をかいたあとは急いで汗抜きしましょう。汗は、衣類が黄色く変色してしまう原因です。なるべく早く、汗を吸収する布などにより、汗を取り除きましょう。
また、食べこぼしたり、飲み物がはねたり、泥汚れなどで袴が汚れたりした場合には、早めに跡を取り除くことが大切です。汚れが染み込んでしまう前にすばやく落とすことにより、染みになることを防げます。
しかし、高級素材で織られた袴は、自宅での処理がむずかしく、適さないことがほとんどです。袴のクリーニングに精通した専門店に相談することをおすすめします。
クリーニング
袴の定期的なクリーニングは、質を維持するのに効果的です。1回着用しただけでクリーニングする必要はありません。目立つ汚れがない場合は、クリーニングなしで数回着用しても質が落ちることはないでしょう。
ただし、シーズンの終わりなどにはクリーニングすることをおすすめします。長期間保管する場合にも、クリーニングや汗抜きは必要です。
レンタルした袴ならお手入れの必要はない
袴をレンタルした場合には、レンタル料金にクリーニング代が含まれています。つまり、着用した後の手入れは、基本的に必要ありません。仮に汚れてしまったとしても、少しであればクリーニング代を請求されないことがほとんどです。
しかし、汚れがひどい場合や破れ、ダメージがある場合など、通常の使用範囲を超えるような状態の場合には、追加料金が発生するケースがあります。レンタルの規約に、追加のクリーニング代が請求されるケースが詳細に記載されているので、内容をよく確認しておきましょう。
まとめ
袴は、適切な方法で手入れすることで、うつくしさを長く保てます。礼装用の袴は、水洗いに適していない場合がほとんどなので避けましょう。また、袴は毎回クリーニングに出す必要はなく、陰干しや汗抜き、ホコリ落としなどの基本的なケアをしっかり行うことが、うつくしさを保つ秘訣です。レンタルサービスを利用すると、手入れの心配もなくなります。利用の際は、契約条件や細則をよく確認しておきましょう。