
袴は、卒業式などの晴れの日を彩る伝統衣装です。そして、袴を着ているときには、いくつかのマナーに注意する必要があります。本記事では、椅子に座る際や階段の昇降、食事会の乾杯のマナーなど、場面ごとの注意事項をまとめて解説します。これから袴を着る機会がある人は、ぜひ参考にしてください。
椅子に座るときのマナー
椅子に座る際に袴を着用している場合、洋服の時と同じように深く腰掛けるのは避けるべきです。深く座ってしまうと袴の布地が引っ張られてしまい、着崩れの原因になります。そのため、浅めに腰掛けることが基本のマナーとされています。
とくにスカートのように袴の裾を押さえながら座ろうとすると、布に無理な力がかかり、見た目も乱れやすくなってしまうので要注意です。スムーズに座るためには、袴の両脇の隙間から手を後ろ側に入れて、布が引っ張られないように整えながら座るのがコツです。
このようにして余裕を持たせて布の流れを整えることで、着崩れを防ぎつつ美しい所作を保つことができます。また、浅めに腰をかけた状態で背筋を伸ばすと、姿勢も美しく見え、全体的に上品な印象を与えることができます。
階段を昇降する際のマナー
袴を着用して階段を移動する際には、袴の長い裾を踏んでしまわないように注意が必要です。袴は丈が長いため、無意識のうちに足元に絡まりやすく、転倒や着崩れの原因にもなります。美しく安全に移動するためには、階段の上り下りにおいて、それぞれ適切な所作を心がけることが大切です。
まず階段を上る際には、袴の両脇の隙間から手を入れ、前側の布を軽く持ち上げるようにして歩くとよいでしょう。こうすることで足元が見えやすくなり、袴の裾を踏んでしまうリスクを減らすことができます。反対に、階段を下りる時には、袴の後ろ側を持ち上げるように意識しましょう。後ろに引きずる布地を軽く浮かせることで、裾が階段の段差に引っかかるのを防げます。
これらの動作を意識的に行うことで、卒業袴の美しい形を保ちつつ、安心して移動することができます。慣れない着物姿での移動は思った以上に動きづらいため、焦らず一歩一歩丁寧に動くことが重要です。
食事会で乾杯するときのマナー
袴を着用している場合には、乾杯の所作にも特有のマナーが求められます。たとえば、乾杯の際にグラスや杯を高く持ち上げようとすると着物の袖がめくれてしまい、二の腕が見えてしまうことがあります。これは日常的な洋装では気にされないことかもしれませんが、和装においては大切なマナーのひとつです。袖から腕が見えるのは「無作法」とされ、品格を損なう恐れがあります。
このような場面では、グラスを持つ手の反対側の手で袖口を軽く押さえるようにし、腕が露出しないように配慮するのが望ましい所作です。袖を押さえることで着姿の美しさが保たれ、動作にも落ち着きと品が生まれます。また、袖を丁寧に扱うという姿勢は、周囲への気遣いや日本の伝統文化への理解を表す行動としても評価されます。
トイレに行く際のマナー
袴を着用している際にトイレを利用する場合には、着崩れや汚れを防ぐためのマナーや注意点をしっかりと把握しておくことが大切です。まず最初に注意すべきことは、袴の裾が床に触れてしまうことです。トイレの床は清潔とは限らず、袴が触れてしまうと汚れるだけでなく、シミやにおいの原因にもなってしまいます。
そのため、トイレに入る前には、袴の袖を帯の部分にしっかりと差し込んでおくのが基本的なマナーです。これにより、動作がしやすくなるだけでなく、袖が床に垂れることも防げます。
また、袴はスカートのように筒状の形をしているため、扱い方は洋服のスカートと似ています。スカートをまくり上げるようにして用を足すことができるため、特別な難しい手順は必要ありません。ただし、袴の前後の布をしっかりと持ち上げるように意識することで、布の引きずりや着崩れを防ぐことができます。
車に乗るときのマナー
袴は洋服と比べて動きが制限されやすく裾や袖が長いため、車の乗り降りの際には細心の注意が必要です。正しい所作を守ることで、袴を美しく保ちながら安全に乗車することができます。車に乗る際には、まず袴の裾を両手で持ち上げて、地面に引きずらないようにしましょう。
そのうえで、車体に対して横向きに立ち、お尻からシートに腰掛けるように座ります。前向きに乗ろうとすると動きが不自然になり、裾を踏んだり着崩れを招く可能性があるため、この横向きの動作が基本です。腰を下ろしたあとは、膝の上に袴の袖を丁寧に乗せておきます。これは、袖がぶら下がって車のドアに挟まったり、外側に垂れて汚れてしまうのを防ぐためです。
その後、腰を軸にしてゆっくりとお尻を回転させながら、両足を揃えて車内に入れるようにしましょう。降車する際も同様に、袖と裾をきちんと整え、着崩れや汚れを避けることが大切です。また、ドアを閉める際には、袴の裾や袖が車のドアに挟まっていないかを必ず確認してください。
まとめ
袴は卒業式などの特別な日にふさわしい美しい伝統衣装ですが、洋服とは異なるため、場面ごとにふさわしい所作やマナーを意識することが大切です。椅子に座るときには浅めに腰掛けて着崩れを防ぎ、階段では裾を持ち上げて安全に移動する工夫が求められます。乾杯の際には袖口を押さえて腕が見えないよう配慮し、トイレでは袖や裾を帯に挟んで清潔を保ちましょう。また、車に乗る際には動作を丁寧に行い、裾や袖が挟まらないよう注意が必要です。このように、袴を美しく着こなすには立ち居振る舞いにも心を配ることが不可欠です。細やかなマナーを身につけることで、和装ならではの優雅さと品格を最大限に引き出すことができます。