袴は学ぶ女性の象徴であり、上流階級の女性だけが着用できる特別な衣装でした。そのため、現在でも卒業式に参加する女子大生の多くは、袴をレンタルして式典に参加します。そんな袴を着用するにあたって、どのような履きものを合わせるか悩む人は珍しくありません。
そこで、今回は袴に合わせる履きものの候補になりやすい草履とブーツについて、それぞれのメリットとデメリットについてご紹介します。デメリットの対策方法も一緒に取り上げるため、袴のレンタルを検討している人はぜひ参考にしてください。
草履のメリット
それでは、最初に草履のメリットについて解説します。果たして、草履にはどのような利点が存在するのでしょうか。詳しくみていきましょう。
着脱しやすい
草履のメリットとして、着脱のしやすさが挙げられます。卒業式が終わった後、袴を着用した状態で移動することが想定されますが、移動先が土足厳禁の場所だった場合、当然ですが履きものを脱がなくてはなりません。このとき、草履を履いていれば、もたつくことなく履き替えが行えます。
ちなみに、草履を脱ぐ場合は、あらかじめ鼻緒から足の指を離しておくとスムーズに脱げます。また、再度草履を履く際は、片方ずつ前緒に足を滑り込ませて、しっかり履いてください。つま先を地面に当てて履く人もいますが、草履や足袋に汚れが付着する原因になるためやめておきましょう。
着物の雰囲気に合わせやすい
草履は、日本の伝統的な履きものです。そのため、どんな着物と合わせても雰囲気がまとまりやすいという利点があります。
袴に合わせて草履を履く場合は、台の高さが4〜6cm以上の草履がおすすめです。草履は台の高さが5cm以上のものが礼装用とされています。そして、卒業式もフォーマルな席のため、袴に合わせる草履も礼装用を選びましょう。
また、袴姿をスタイルよく見せたい場合は、厚底草履も選択肢に挙げられます。厚底のお陰で身長が高くなる分スタイルアップが期待できますし、最近では多種多様なデザインの厚底草履も登場しているため、自身の着物や袴に合ったものを選びやすいです。
草履のデメリット
袴を着用するにあたって、日本の伝統美を表現しやすい草履ですが、もちろんデメリットも存在します。草履を選択する場合、事前に考慮しておかなければならない欠点は以下のとおりです。
雨の日に足元が濡れる
草履を使用する際、天候が雨や雪だと足元が濡れてしまいます。卒業式が行われるのが3月と仮定して、雨のリスクはもちろん、地域によっては雪が降る可能性も否定できません。
足元が濡れてしまうと、不快感が強まるだけでなく体全体が冷え込んでしまいます。3月はまだ冷え込む時期です。そのため、卒業式当日は問題なくても、後日体調を崩してしまうかもしれません。
そもそも、草履自体も構造上水に弱い道具です。浸水した結果底の素材が傷んでしまい、劣化が早く進んでしまう場合もあるため、雨の日は基本的に草履を履くのはおすすめできません。
鼻緒ずれのリスク
草履を履くうえで、必ず考慮しておきたいのが鼻緒ずれのリスクです。鼻緒ずれとは、その名のとおり鼻緒と足の指間が擦れてしまい、擦り傷ができてしまうことを指します。鼻緒が固い、きつい状態で履き続けてしまった、または鼻緒が足の指に食い込みすぎてしまったなど、鼻緒ずれが発生する原因はさまざまです。
鼻緒ずれは皮膚が赤くなる程度で済む場合もありますが、状態がひどいと皮が剥けてしまったり、水膨れになってしまったりします。そこへ雨が原因の濡れによる不快感と冷え込みが合わさると、式典に集中するのは困難になるでしょう。
ブーツのメリット
ブーツと袴のセットは、大正時代の女学生を彷彿とさせるレトロで可愛らしい雰囲気を演出できる人気の組み合わせです。そんなブーツを選択するメリットは、以下の通りです。
スタイルアップ効果
ブーツには、スタイルアップ効果があります。ブーツにはヒールがあるため、ヒールの高さ分足を長く見せることが可能です。また、編み上げブーツを選択すると足を細く見せる効果も期待できます。
袴にブーツを合わせる場合、草履を着用するときよりも短い袴を選び、ブーツの編み上げ部分を見せるのが一般的です。しかし、あえて長い袴を着用して、ヒールの高いブーツを履くと、足を長く見せられます。
卒業式などの式典を終えた後は、友人や家族と記念撮影を行う人もいるでしょう。そのとき、少しでもスタイルのよい姿を残したいと思う人は、草履ではなくブーツを選ぶのがおすすめです。
足元が冷えない
ブーツを選択すると、足元の冷えが気にならないのも大きな利点です。ブーツは草履と異なり、足先から足首より上まですっぽりと覆ってくれるため、寒さをあまり感じません。
また、ブーツは中に履いているものが見えないため、靴下やタイツを用いた防寒対策もしやすいです。そのため、寒さに弱い人や冷え性の人は、草履よりもブーツを着用した方がよいでしょう。
ただし、防寒対策がしやすいからといって、ブーツを脱いだときに違和感のある色や柄の靴下を選んではいけません。ブーツに合わせる靴下やタイツは、ブーツの色に合わせて黒、またはブラウンを選ぶのが無難です。
ブーツのデメリット
スタイルアップや機能面のメリットが多いブーツですが、もちろんデメリットも存在します。ブーツを選択する場合は、以下の欠点が存在することも考慮しておきましょう。
着脱に手間がかかる
ブーツは着脱に手間がかかる履きものです。たとえば、編み上げのブーツを着用した場合、靴を脱ぐ際に紐をほどき、再び履く際に紐を結び直す手間がかかります。近年はサイドファスナーのブーツも登場していますが、それでも草履の方が着脱は簡単です。
また、ブーツを脱いだり履いたりするとき、必ず体を折り曲げる必要があります。すると、着物が着崩れてしまい、見栄えが悪くなる可能性も否定できません。
そもそもブーツは、人によっては長時間着用すると足が浮腫んでしまうリスクもあります。袴を着ている間に履きものを脱ぐ可能性が高い人や、体質的に浮腫みやすい人は、ブーツは避けた方がよいでしょう。
袴のデザインを選ぶ
ブーツは合わせる着物や袴のデザインによっては、ややカジュアルすぎる印象を与えてしまいます。そのため、選択肢が狭まってしまい、本当に着たい着物や袴を諦めざるを得ない可能性が高いです。
卒業式などフォーマルな場に履いていくブーツの色は、黒、または濃い茶色などダークカラーを選びましょう。また、歩くときに裾が上がっても肌が見えないように、ブーツの丈は15cm以上のものにしてください。
ブーツのデザインは編み上げのショートブーツが定番ですが、編み上げ以外のブーツでも問題はありません。ただし、袴と合わせたときにスマートな印象を与えるために、足首が締まっているデザインのブーツにしましょう。
草履とブーツのデメリットの対策方法
草履とブーツにはそれぞれデメリットが存在しますが、欠点を克服するための方法があります。草履、またはブーツを着用する場合は、以下の方法を試してみましょう。
草履の場合
雨の日に草履を履く場合は、草履専用のカバーを使用しましょう。また、移動の際は草履を脱いで、会場に着いたら履き替える方法もあります。
どうしても雨の中で草履を履かなくてはならないのであれば、合皮やビニールコーティングされた草履を使用するのがおすすめです。また、雨に濡れたときを想定して、予備の足袋を複数用意するのもよいでしょう。
ブーツの場合
着脱のしにくさが欠点のブーツですが、靴紐を変えることでブーツの紐を緩めやすく、そして締めやすくできます。摩擦が少ないノンワックスの紐を使用するのがおすすめです。
また、ブーツのホール数を減らすとかなり脱ぎやすく、そして履きやすくなります。たとえば、ホール数が8つのブーツを使用する場合は、一番上のホールを開けて7番目のホールまでに紐を通しましょう。
まとめ
以上、草履とブーツ、それぞれのメリットとデメリット、そしてデメリットの対策方法について取り上げてきました。袴に草履とブーツ、どちらを合わせるかは本人の好みだけでなく、着物の柄、そして全体的にどのような雰囲気にまとめたいかによって異なります。伝統を大切にする場合は、草履、そしてファッショナブルさを出したい場合はブーツがおすすめです。
着物や浴衣を着る機会が減っている現代において、袴を着る機会も決して多くはありません。卒業式など記念となる式典でよい思い出を残すためにも、草履とブーツ、どちらを合わせるか悔いのない選択をしてください。