袴の構造と着付け方は、男女で異なる要素が多くあります。違いを理解することで、より美しく袴を着こなせるようになるでしょう。とくに女性用の袴は、正しく着付けできていないと、転んでけがをすることもあるため、注意が必要です。この記事では、男女で異なる袴の特徴や着付けのポイントについて詳しく解説しているので参考にしてください。
男性用袴の特徴と構造
男性が一般的に着用するのは馬乗り袴です。これは、江戸時代に、武士が馬に乗るためにデザインされました。馬乗り袴は、股で分かれる仕切りが入っていることが特徴です。したがって、ズボンを履いているときのような足さばきが可能となり、女性用の行灯袴よりも、比較的動きやすい構造になっています。
明治初期までは、女性も馬乗り袴を着用していましたが、行灯袴が登場したことで、女性は行灯袴を着用することが一般的になりました。しかし、男女用に決められた袴を着用する決まりはないため、男性がスタイル的な好みで行灯袴を着用することもあります。
男性用袴は、腰の位置に合わせて帯を結ぶのが一般的です。また、スタイリッシュに袴を着こなしたい場合には、腰板を使う選択肢もあります。腰板の中に入れられた芯材により腰を支え、姿勢をまっすぐに保つ役割を果たすため、美しいシルエットを作り出すのです。
男性用袴の素材には主に3つの種類があり、使用する行事によって使い分けます。精好仙台平は、仙台で生産される高級素材で、上品な光沢と張りが特徴です。平織の織物は、御召で経済産業省が指定した伝統工芸品になっている先染めの糸を使用しています。
そして、紬は品質の劣る糸を先に色染めして織った着物で、伝統的に日常着として使用されてきました。精好仙台平を使用した袴はフォーマルな場面に適しており、グレーの縞模様がもっともフォーマル度が高いです。袖や無地や縞以外の柄の袴は、カジュアルな場面に合わせるのがよいでしょう。
女性用袴の特徴と構造
女性用の袴は、股が仕切りで分かれていないスカートタイプの構造をしています。成人式や卒業式などでよく使用される行灯袴が代表的です。男性用袴との大きな違いは、帯の結び位置。腰の高さで結ぶことが一般的である男性用と異なり、胸直下に帯を結ぶのが理想とされています。
そうすることで全体のバランスがよくなり、ウエストが締め付けられにくいためです。適切な位置で結ぶことによって、すっきりとしたスタイルになるでしょう。男女で厳格に着用する袴が決められているわけではないため、女性が男性用の袴を着用しても、問題になることはありません。
女性用袴は、華やかでカジュアルな装飾や生地が多く使われます。上品な印象や可愛らしい印象など、さまざまなデザインが特徴的です。女性用の袴には腰板がなく、芯となる板紙が入らないため、着用時に圧迫感がありません。これが女性用袴の快適な着心地の一因です。
袴を美しく着こなすコツ
袴の着付は個人では対応が難しい場合もあります。不安な場合は、レンタル店に着付けを依頼することも考えましょう。手ぶらで行けて、着付けも正しく、スムーズに行えるので便利です。着崩れを避けて、すてきな袴姿を楽しんでください。
なお、いくつかのポイントに気を付けることで、袴を美しく着こなせるため、コツを知っておきましょう。
裾を踏まないように注意
袴の着崩れを防ぐためには、裾を踏まないように注意しましょう。とくに階段を移動したり、椅子に座ったりする際には、裾を意識的に持ち上げることが重要です。裾を踏んでしまうと、転倒してけがをするリスクがあるため、裾の長さは非常に重要。必ず適切な長さに着付けしましょう。
裾の長さを調整
袴を着用する際は、自分の身長に合わせて裾の長さを調整することが重要です。裾をくるぶしの長さに合わせると、足袋から足が見えず、踏みつけることも防げるため、着崩れを防げるでしょう。
袴にブーツを合わせる場合は、くるぶしよりも3cmから5cm程度短く着付けることがおすすめです。足首部分を見せることで、軽やかでおしゃれな印象になります。
長襦袢の長さを調整
袴を着る際には、長襦袢の長さを必ず調節しましょう。インナーである長襦袢が袴からはみ出さないように、短く着付けることが重要です。インナーがアウターから見えてしまうと、だらしない印象を与えてしまいます。
荷物を入れない
袴に荷物を入れることはやめましょう。袴には、基本的にポケットがついていないため、荷物の重量で着崩れる原因になってしまいます。荷物はバッグに入れて持参するのがおすすめです。
まとめ
男女それぞれの袴の構造や着付け方には、細かな違いがあります。それぞれの特徴を理解し、正しく着付けすることで、より美しく着こなせるでしょう。男性用の袴は股の仕切りがあるズボンタイプの馬乗り袴であり、腰の位置で着付けるのが一般的です。
一方、女性用の袴はスカートタイプの行灯袴で、股の仕切りがなく、胸の下で帯を結びます。また、長襦袢や裾の長さの調整など、着付けの際には注意すべきポイントも多いです。袴を美しく着こなすためには、これらの違いや注意点を把握し、適切な着付けを心掛けましょう。